大きな嘘をつき続けた果てに2011/05/02 17:35

子供にこうした嘘を教えているサイトを設立したのは……
『原発事故──その時あなたはどうするか!?』(日本科学者会議福岡支部核問題研究委員会・編、1989年、合同出版)という本があります。絶版ですので、正確には「ありました」というべきでしょう。
 版元などのご協力により、内容は現在ネット上で誰でも読めるようになっています。⇒こちら

 執筆・編纂したのは、森茂康九州大学名誉教授をはじめ、九州大学、九州工業大学、佐賀大学などの7人。
 20年以上昔に書かれたものですが、現在福島第一原発で起きている原発災害にそのままあてはまる内容です。今読むと、なぜこうした真摯な警告を生かせなかったのかと、改めて残念に思います。

//原子力発電所に事故が起きて放射能が漏れるような事態になったとき、国および地方自治体(知事や市町村長)には住民を被害から守る責任があります//
 ……という書き出しで始まるこの本は、「原発事故が起きたらどうすべきか」「原発事故とはどのようなものか」「放射線障害とはどのようなもので、どうすれば身を守れるか」「原発重大事故はどのようにして起こりうるか」「原発事故に対する法整備の提言」という内容を70ページ弱に収めてあり、非常に読みやすく、分かりやすい説明には感心させられるばかりです。
「あとがき」は、奇しくもこのように結ばれています。

//本書を作成する作業を進めている間にも、原発事故をめぐるさまざまなニュースが入ってきました。その中でも、福島原発の再循環ポンプの羽根の破損事故に際して警報が鳴っているのにそのまま運転を続けた、というニュースに、私たちは戦慄をおぼえると同時に、本書を作成する意義を重ねて確認することにもなりました。しかし、私たちは、本書が実際に使われるような原発事故がけっして起こらないことを願っています。//

 福島原発周辺に住む私は、この本の存在を重大事故が起きた後にネット上で読むことになりました。この本が福島の住民に配られていたら、どれだけ役に立ったことでしょう。
 しかし、この本の冒頭で「原子力発電所に事故が起きて放射能が漏れるような事態になったとき、住民を被害から守る責任があります」と宣告された国や地方自治体(知事や市町村長)は、原発事故への備えを固めなかっただけでなく、逆に、「原発事故は起こりえない」と国民を洗脳し続けてきました。
 ほんの一例を示しましょう。
 財団法人福島県原子力広報協会 という組織があります。
 事務所は大熊町の福島県原子力センター内にありますが、当然今は立入禁止です。でも、サイトは生きていて今も閲覧可能。とても興味深い内容なので、ぜひ覗いてみてください。
 財団の説明には、
「財団法人福島県原子力広報協会は、県民に原子力の平和利用の知識と安全性に関する普及啓発を行い、地域社会の振興に寄与することを目的として、福島県及び原子力発電所立地・予定関係11市町村の出捐(しゅつえん)によって設立されました」
 ……とあります。
「出捐」という言葉は聞き慣れませんが(ATOKも変換してくれませんでした)、辞書を引くと「当事者の一方が自分の意思で、財産上の損失をし、他方に利益を得させること」とあります。
 ということは、福島県と浜通り11市町村が金を出して、県民に対して「原発は必要なんですよ」「原発は安全ですよ」とPRするために設立した、ということになりますね。
 設立出資金は2,000万円。実際の金がどこから出たのかは分かりませんが、あくまでも形の上では東電が設立したのではなく、地元自治体が設立したことになっている点が重要です。
 この財団の「出捐団体」は、福島県、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、南相馬市、田村市、いわき市の12自治体です。理事長は渡辺利綱(大熊町長)。事業費は約1億293万円(平成22年度予算)となっています。
 毎年1億円以上をかけて、原発のPRをしているのです。

 財団のサイトには「ウランちゃんのなるほどアトム教室」とか「アトムキッズランド」といった子供向けのコーナーがあり、原子力をPRしています。
「アトムキッズランド」には「アトム博士になろう! クイズチャレンジ」というコーナーがあり、そこにはこんなクイズが出題されていました。

問題:「地球温暖化によって地球の気温が2度上がると、海面はどのくらい上昇すると予測されているでしょう?」
答え:「50cm~1m」 解説:21世紀末までに地球の平均気温は約2度も上昇し、これにより北極や南極の氷が溶け海面が50cm~1m上昇するといわれています。


 地球の平均気温が多少上がったからといって極地の氷が溶けたり、それによって海面上昇などしないことくらい、まともな大人なら知っていますが(そもそも北極の氷は海面に浮いているので、たとえすべて溶けたとしても海面上昇には関係しない)、こういう大嘘を金を使って子供たちに教えているのです。
 注意してほしいのは、こうした大嘘を子供たちに教え込んでいる組織が、あくまでも電力会社ではなく、地元自治体によって設立されている(ことになっている)ことです。
 最近ニュースになった「わくわく原子力ランド」(小学生用)と「チャレンジ!原子力ワールド」(中学生用)という教科書副読本も同じですね。これは国(文部科学省と経済産業省)が作製したもので、全国の小中学校に無償で配布されています。国策としての原子力発電事業を肯定する内容で、今回の事故後、「大きな地震や津波にも耐えられる」「放射性物質がもれないようしっかり守られている」などの表現が問題にされました。

   この副読本は、2008年に改訂された新学習指導要領で原子力推進を重視することが確認されたために作られました。実際の作成には「日本原子力文化振興財団」(文科省関連の財団法人)が関わっていたようで、その内容を同財団のサイトでも公開していましたが、4月13日に削除しています。
 この「日本原子力文化振興財団」の紹介ページには、
「地球環境への負荷の小さいエネルギーである原子力に、国民の積極的な支持と協力を得るためには、きわめて幅広く、かつ多岐にわたる活動が求められます。当財団は、発足以来、設立の趣旨にのっとり、多種多様な事業を展開し、原子力への理解を深め、不安や疑問を払拭していただくための努力を続けてまいりました」
 とあります。
 言い換えれば、原子力が必要不可欠かつ安全だと国民に信じ込ませるためには、ありとあらゆる手段を講じることが必要であり、その役割を担ってきた、ということですね。
 この「国民の積極的な支持と協力を得るための、きわめて幅広く、かつ多岐にわたる活動」が実を結んだ結果、日本人はすっかりバカになってしまいました。
 本当のことを自分で調べる努力をせず、テレビや新聞に書かれていること、学校で教えられることがすべて本当のことだと思うようになりました。
「CO2が増えると地球が熱くなって海面が上昇し、ツバルなどの島国が沈んでしまうらしい。ホッキョクグマが絶滅してしまうんだって。大変だ! そのためにはCO2を出さないクリーンで安価なエネルギー、原子力発電や風力発電、太陽光発電に切り替えなくては! 急がなくちゃ! そのためには何ができるだろう。そうだ、我が家も屋根に太陽光発電パネルを取り付けよう。グリーン電力証券を買おう。たまにしか乗っていない13年前のクラウンはまだ1万キロしか走っていないけど、廃車にしてプリウスに買い換えよう……」
 ……などなど、「幅広く、かつ多岐にわたる活動」を画策した人たちの思うつぼの思考形態、行動様式に染まっていったのです。

「ウランちゃんのなるほどアトム教室」や「わくわく原子力ランド」や「チャレンジ!原子力ワールド」は、確実に成果を上げたと言えるでしょう。
 こうした政策を進めてきた人たちは、人心を操ることや行政を牛耳ることにかけてはプロ中のプロです。
 首長の接待や立地自治体の懐柔はうまいし、そのための金はふんだんに使います。
 ギャラの高い有名人を起用したテレビCMを流して原子力政策をPRしてきましたし、テレビのニュース番組のスポンサーとなることで、メディアもコントロールしてきました。
 しかしその一方で、水に浸かっても大丈夫なバックアップ電源を用意する金は使わないし、考えようともしません。努力する目標を完全にはき違えているのです。

 さて、話を福島に戻しましょう。
 子供たちに大嘘を教え込み、原発の必要性と安全性を植えつける財団の「出捐団体」となっている福島県、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、南相馬市、田村市、いわき市は、これからどうしますか?
 福島第一原発の後片づけだけで、東電も国も手一杯。今までのように、住民を手なずけるための金が落ちてくることはもう期待できませんよ。しっかり補償金を取りたいなら、むしろはっきりと原発を拒否する姿勢を示さないと矛盾するということにも気づいてほしいものです。
 土地も暮らしもめちゃめちゃにされた上で、なお「原子力行政のあり方は国民的な議論が必要」とか「地域住民の感情を考慮」などと及び腰なことを言っていては、「補償」の内容も舐められてしまうということを理解してください。
「原発雇用」に関しては、気の遠くなるような廃炉までの作業により、今まで以上になるので心配ありません(ただし、仕事量は増えても、内容は「汚れ仕事」が中心になりますが……)。
 尻尾を振っておねだりする姿勢を少しでも残していたら、福島は、このまま核廃棄物最終処分場、産廃、巨大風車などなどが集中する、永久に「文化果つる土地」「見捨てられた地」「差別される土地」になりはてるでしょう。そういう土地にすることと引き替えに国から金が投入されても、その金にどんな意味があるというのでしょうか。
「緊急時避難準備区域」の我が家に戻り1週間。福島に生きる一人として言います。
 住民や自治体の長がこんな簡単なことも分からないようでは、福島の再生なんて、到底ありえない、と。

(税金投入によって懐柔され、情報コントロールによって騙され、その果てに裏切られ、被害を受ける構図は巨大風車も原発もまったく同じなので、敢えてここに掲載します。
原発震災情報・現地リポートは別ブログhttp://gabasaku.asablo.jp/blog/に更新しています。
☆言うまでもないことですが、福島原発に近い滝根小白井ウィンドファームや檜山高原ウィンドファームは3.11以後完全に停止したままで、まったく発電していません)

ストップ!風力発電

ストップ!風力発電 鶴田由紀・著

かつて北欧を旅行したときに見た洋上風車の風景に感動し、環境問題に目覚めて、帰国後、市民風車への献金をしようとした著者が、風力発電の恐ろしさ、馬鹿馬鹿しさに気づき、隠された真実を、今、淡々と報告する。「大変な問題なのに、ほとんどの人はまったく知らない」ことの恐ろしさを訴えるために。
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風力発電の不都合な真実

風力発電の不都合な真実 風力発電は本当に環境に優しいのか? 武田恵世・著

三重県で長年自然環境調査活動を続けてきた著者は、当初は広くPRされているように「風力発電は化石燃料を使わない、CO2を排出しない「環境に優しいエネルギー」だと信じていたが、目の前で展開される巨大風力発電施設建設のでたらめぶりに驚き、調査を開始。11年を経て、この事業がいかに欺瞞に満ちた詐欺的なビジネスであるかを知って戦慄する。
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このブログについて

環境条件がまったく合わないのを無視して、巨大風車群を無理矢理建設し続けることにより、日本は破壊されている。日本における風力発電ビジネスの実体に迫る。

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