「風力発電の不都合な真実」(武田恵世・著)2011/04/07 21:29

風力発電の不都合な真実(武田恵世・著)
 武田恵世氏の『風力発電の不都合な真実 風力発電は本当に環境に優しいのか?』(アットワークス刊)を先ほど読了しました。
 多くの日本人同様、著者も当初は「風力発電は、石油などの化石燃料を使わないので排気ガスを出さず、CO2を排出しない環境に優しい自然エネルギーだ」と信じ、大きな期待を抱き、出資しようと思っていたひとりでした。しかし、目の前で展開される事業のあまりの杜撰さ、でたらめぶりに疑問を抱き、ひとつひとつ「本当のところはどうなっているのか」と調べていきます。
 そうして11年かけて調査し、検討した結果「現状では風力発電は決して推進してはならない」という結論に達し、本書を書くまでに至った、ということがまえがきに書かれています。

 風力発電に期待を抱いている人には、前半だけでも読んでいただきたいと切にお願いしたいのです。
 スマートグリッド、NAS電池、揚水発電所との併用の話も紹介しています。ヨーロッパでの現状も報告しています。中国で建設ラッシュになっている風力発電施設がどうなっているのかにも触れています。多分、みなさんが思っていた内容とは違うことが書かれています。

 その上で、例えばこの一節だけでも、しっかり読んでほしいのです。

//現在、日本では風力発電で発電した電気は、開閉器、変圧器などを介して電力会社の電力系統に直接入れられています。
 日本全国の電力会社は、強い風が吹いて風力発電所が稼働すると、火力発電所の出力をその分落とすという運用はしたことがありません。
 また、火力発電所が廃止されたこともありません。電力系統に大量の電気が急に入ったり、入らなくなったりすると電力系統全体が不安定になり、停電することもあるのですが、まだ風力発電所からの電気は系統全体の1~2%以下で誤算の範囲なので不安定にはならないので何もしていません。
 風力発電所が結構増えた北海道電力、東北電力では、風力発電所の発電量が増えると、既存の火力発電所の出力は落とさずに、風力発電所からの送電を止めています(接続制限)。なぜかというと、風は一定の強さで吹き続けるものではないので、それに合わせて火力発電所などの出力を調整するのは難しいからです。
 つまり、現状では、風力発電所ができたことで、火力発電所の出力も、数も減らしてはいないので、化石燃料の消費量をまったく減らしてはいないのです。//(37ページ)


 このことは、no-windfarm.netでもさんざん書いてきたことですが、未だにきちんと裏をとらずに感情的な反論をしてくる人たちが後を絶ちません。反論には正確なデータが必要です。私もぜひ見たいので、みなさんの力で、事業者や政府にしっかりしたデータを出させてください。お願いします。

 先日、『そうだったのか! 池上彰の学べるニュース』(テレビ朝日系)を見ていました。原発に代わる代替エネルギー、新エネルギーの話をするというので、私は「ああ、またか」と暗い気持ちになったのですが、池上さんは風力発電についてはっきりと「低周波による健康被害が問題になってきています」と解説していました。
 そして、彼が紹介した「有望視されている次世代エネルギー」は、ガスハイドレートやオイルシェールでした。
 生放送であったため、内容的には中途半端になった感がありましたが、ああ、テレビメディアも少しずつ変わってきたのだなと、少し灯りが見えてきた気がしました。


 さて、いちばん大切なことがあとがきに書いてあります。
 以下、「おわりに」の一部を抜粋します。

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 この問題で注意したいのは、最初は悪意を持って風力発電を進めた人はおそらくいなかったであろうということです。化石燃料を使わない自然エネルギーとして誰もが期待したものだったのです。
 それがなぜこれほどの惨状を招いているのか? 問題点がわかった時点で、素早く適切な対応をしなかったからだと言えましょう。
  そして、手厚い、ノーチェックの補助金政策、優遇政策がなされるとともに、それだけを目当てに成り立つ産業構造ができあがってしまいました。産業として補助金なしで成り立つように育成するための補助金であるはずが、補助金がないと成り立たない産業構造を造ってしまう従来の失敗がまたしても繰り返されました。
 特別会計によるノーチェックの補助金制度は、全廃するべきです。
 また、この風力発電の問題は、住民合意のあり方、環境影響評価のあり方、補助金政策や優遇政策のあり方など、国の民主主義や政策の問題点の縮図でもあります。
 (略)
 今度こそ、風力発電の問題だけにとどまらず、民主主義や政策の根本を改めないと、同じような問題が今後次々に起こってくるでしょう。この問題をきっかけに、今度こそなんとか改めていきましょう。
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 これを読んで、あれっ? と思った人は多いはず。
 そう、今、福島第一原発で起きていることに、そっくりそのままあてはまるのです。
 
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 この問題で注意したいのは、最初は悪意を持って原子力発電を進めた人はおそらくいなかったであろうということです。化石燃料を使わない未来のエネルギー産業として誰もが期待したものだったのです。
 それがなぜこれほどの惨状を招いているのか? 問題点がわかった時点で、素早く適切な対応をしなかったからだと言えましょう。
 そして、国策として強引に進められ、数々の優遇政策がなされるとともに、それだけを目当てに成り立つ「原子力村」という官産学複合体構造ができあがってしまいました。
 原子力発電の問題は、住民合意のあり方、環境影響評価のあり方、補助金政策や優遇政策のあり方など、国の民主主義や政策の問題点の縮図でもあります。
 今度こそ、原発の問題だけにとどまらず、民主主義や政策の根本を改めないと、同じような問題が今後次々に起こってくるでしょう。この問題をきっかけに、今度こそなんとか改めていきましょう。
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 とにかく、日本のエネルギー問題について何か言うのなら、最低限この本くらいは読んでからにしましょう。そして、反論するなら、ここに出ているデータや事実にひとつひとつ反証しなければ無責任です。
 たったひとつだけでもいい。例えば、日本の商用風力発電施設の発電実績データをひとつでもいいから提示し、その分、火力発電が燃料をセーブできていることを示してみてください。
 多分できません。なぜなら、どの風力発電所も発電実績データを公表しないからです。
 こうならいいな、という願望のもと、「電力村」(電力会社や国)がお金をかけてPRしてきたことだけを信じていたら、今福島第一原発で起きている悲劇と同じことを繰り返すことになってしまいます。
 今の日本には、そんなことをしている余裕はありません。
 本当に、今度こそなんとかこの腐った連鎖を断ちきり、改めないと、この国に未来はないのです。


風力発電の不都合な真実

風力発電の不都合な真実 風力発電は本当に環境に優しいのか? 武田恵世・著

三重県で長年自然環境調査活動を続けてきた著者は、当初は広くPRされているように「風力発電は化石燃料を使わない、CO2を排出しない「環境に優しいエネルギー」だと信じていたが、目の前で展開される巨大風力発電施設建設のでたらめぶりに驚き、調査を開始。11年を経て、この事業がいかに欺瞞に満ちた詐欺的なビジネスであるかを知って戦慄する。
現状の風力発電ビジネスは、CO2排出を増加させ、健康被害を引き起こし、補助金制作に頼り切る「使いものにならない」事業だった。原発震災に揺れている今こそ全国民が「正しいエネルギー政策」を考える第一歩として必読の書。
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_  『と・・。』  __Toshimi's Blog__ - 2011/04/12 02:09

前は相当夢中になってあちこち見に行ってた風車、風力発電所だが、しばらく熱が冷めた後の今、こんな大問題点に気が付いた。今更だが・・・

ストップ!風力発電

ストップ!風力発電 鶴田由紀・著

かつて北欧を旅行したときに見た洋上風車の風景に感動し、環境問題に目覚めて、帰国後、市民風車への献金をしようとした著者が、風力発電の恐ろしさ、馬鹿馬鹿しさに気づき、隠された真実を、今、淡々と報告する。「大変な問題なのに、ほとんどの人はまったく知らない」ことの恐ろしさを訴えるために。
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環境条件がまったく合わないのを無視して、巨大風車群を無理矢理建設し続けることにより、日本は破壊されている。日本における風力発電ビジネスの実体に迫る。

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