南伊豆風車紀行(3)2010/01/22 15:41




石廊崎の先端を回って、中木という集落に向かってみました。
途中の海岸沿いの道(県道16号)では、海からの風の強さをよく示す、こんな風景に出くわします。
シュロの木?が、全部山側に曲がっていますね。この風を受けて風車が回るとき、住民の苦しみも上昇するわけです。


奥石廊崎から見た風車群


自然の宝庫 という文句が悲しい
南伊豆町はかけがえのない宝物を
自らの手で簡単に壊してしまった


三坂漁港からの風景


この風景はやはり狂っているとしか思えません。
壊れた風車を修理に来たドイツの技師が、日本での風車の建て方を見て唖然としていたという話を思い出しました。ヨーロッパでは、こんな場所(住居が近隣にある山間の地)に風車を建てるなんて、絶対にありえないことだと。
要するに、とんでもない勘違いをしているのですね。
かつて、台所用の液体合成洗剤が発売されたとき、それでせっせと野菜や果物を洗っている家がいっぱいありました。今ではそんな恐ろしいことをする家はないでしょうが、ベトナムなどでは今も日本から輸出された合成洗剤で野菜を洗っている光景が普通に見られると聞いたことがあります。
山間部に建てられる風車は、それに似ています。よきことと信じて、とんでもない勘違いをやらかしている。
近い将来、「バカみたいだったねえ、あれは」という話になっているのでしょうが、それまでに破壊される自然や、苦しみを押しつけられる人々のことを思えば、とても笑い話ではすまされません。
あまりのばからしさに、どっと疲れが出てきました。
風車建設現場の悲劇を、高速道路建設で立ち退かされた人たちの悲劇と同じだと言う人たちがいます。
可哀想だけれど、社会全体の発展、環境保護のためには仕方がない。誰かが犠牲になって、社会全体の発展や利便性向上をはからなければ、日本はここまでやってこれなかった……と。
でも、それは違うのです。
道路建設など、多くの公共事業には、デメリットもありますが、それによって社会の利便性が上がるというよき面があります。高速道路が山を破壊するのはデメリットですが、それによって大渋滞が解消されれば、無駄な燃料消費や大気汚染が減り、人々の労働エネルギーの節約にもなるでしょう。そのメリットのためになされる事業です。
しかし、風力発電施設にはそうしたメリットがほとんど見込めません。
効率の悪い発電方式を、無理矢理、税金を投入し、法律で優遇(高額買い取り義務など)し、推し進めているわけですから、結果として、環境破壊はますます進み、エネルギーも無駄に使うことになってしまいます。そのことは、別稿でさんざん論考してきましたので、ここでは繰り返しませんが、このことだけは間違えてほしくないのです。
日本の山間部に建てられる巨大風車は、「必要悪」ではなく、完全な「不必要悪」なのです。

今回の訪問で分かったこと、印象に残ったことをまとめておきます。
  • 巨大風車にとって、1kmはごくごく近距離である。2kmは完全危険範囲。3kmも安全圏ではない
  • 耳に聞こえる低周波騒音(ブ~ンといううなり音や、ジュワッジュワッという風切り音)もこたえるが、やはり耳に聞こえない超低周波(20Hz以下)のエネルギーが与える健康被害が深刻である
  • 超低周波による健康被害は、単純に距離が近ければダメージが大きいというわけではなく、地形や位置関係が複雑に関係している。つまり、事前にシミュレーションすることはほとんど不可能である
  • 工事が着工したらあっという間に取り返しがつかない風景となる。その前に止めないと、どうにもならない

南伊豆町の風車群は、まだ試験運転段階です。これが本格稼働したら、東伊豆町や田原市などの被害同様、あるいはそれ以上のひどい状況が出現することでしょう。
すでにこれだけ被害が出ている以上、住民の安全を守るには、住民を完全移転させるか風車を止めるしかないわけで、事業として成立しえないことも明白です。
事業者はお金を持っているでしょうから、ここがビジネスとして成立しなくても大丈夫なのかもしれませんが、町の行政は、とんでもない問題を今後ずっと抱えていくわけです。観光地としても致命的なダメージをすでに受けてしまいました。これから一体、どうするつもりなのでしょう。

同じ道を、私が住む阿武隈も歩むのだろうかと思うと、どっと疲れが襲ってきました。
田村市といわき市にまたがる滝根小白井ウィンドファームは、ほぼ完成に近づいています。
南伊豆町と同じ、2000kw風車ですが、基数はさらに多い23基です。
檜山高原も2000kwが14基。
これらはもう止められません。行政の手によって水源涵養保安林が解除され、私たちの税金が注ぎ込まれ、進められてきました。もうすぐ完成し、稼働します。
南伊豆町と同じ風景、同じ苦しみが、我が家の周りで始まるのです。

のどかな天候なのに、なんとも気分の重い伊豆紀行となりました。
もうだめだな……。
その思いだけが、べっとりと体中に貼り付いています。
風車問題を知り、いやが上にも調べなくてはいけなくなってから、もうすぐ1年が経ちます。
正直、ほとほと疲れました。

いっそ、まったくなかったこと、見なかったこと、知らなかったことにして、この問題には一切沈黙したいと、何度も思いました。
ひとつ書けば、誹謗中傷のメールやWEB上での攻撃が増え、仕事面では完全に無視され、干されていきます。
しかし、最後はやはり、素直な気持ちになって、ひとりでも多くの人にこの現実を伝えたほうがいいと思い直し、これを書いています。
大きな嘘ほど、見抜けなくなると言います。
風車のある風景を配した広告は、増えるばかりで減る気配はありません。こんな時代がいつまで続くのでしょう。
ここに掲載した「風車のある風景」の写真を、素直に見てください。これが「地球環境を救う」景色だと感じられますか?
人間として、一生物としての直観を大切にして生きていきたいものです。

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_  『と・・。』  __Toshimi's Blog__ - 2011/04/12 02:09

前は相当夢中になってあちこち見に行ってた風車、風力発電所だが、しばらく熱が冷めた後の今、こんな大問題点に気が付いた。今更だが・・・

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かつて北欧を旅行したときに見た洋上風車の風景に感動し、環境問題に目覚めて、帰国後、市民風車への献金をしようとした著者が、風力発電の恐ろしさ、馬鹿馬鹿しさに気づき、隠された真実を、今、淡々と報告する。「大変な問題なのに、ほとんどの人はまったく知らない」ことの恐ろしさを訴えるために。
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このブログについて

環境条件がまったく合わないのを無視して、巨大風車群を無理矢理建設し続けることにより、日本は破壊されている。日本における風力発電ビジネスの実体に迫る。

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